権威に弱い
中島誠之助さんの本を読んだ。あの「良い仕事してますねぇ」の中島さんの本だ。骨董商を営んでいる中島さんは今まで多くの偽物を見てきたと同時に、偽物に騙される人を見ている。あの中島さんでさえ、長い人生の中では騙されたこともあるのだと言う。中島さん曰く、権威に弱い人間ほど騙されやすい。特に日本人は権威に弱く、盲目的にそれを信じ込んでしまうことが多いようだ。骨董の世界では箱書きや鑑定書がそれに当る。箱書きや鑑定書がついていても専門家が見ると証明している訳でもなく、言い逃れしている箱書きや鑑定書が多いらしい。それでも素人はそれを頼りに価値があるものと思い込んでしまうのだ。
僕も権威には弱い。僕にとっての身近な(?)権威は世界遺産だ。「ユネスコの世界遺産リストに登録されています」となってると、なんだか行ってみないと損してしまうような気がしてしまう。この前京都を旅行したときもその言葉に釣られて方々へ赴いてしまった。何せ「古都京都」は世界遺産の宝庫だ。京都で登録されている17の寺社と城のうち、実に9つの世界遺産を見てしまった。そしていつものことなのだけれど後悔した。
「僕はユネスコの世界遺産リストに翻弄されている...。」
ユネスコのホームページによると世界遺産とは「地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重な宝物」だそうだ。歴史の宝物です。だからビジュアル的に圧倒されるとは限らない。かつてその場所で歴史的な出来事があったりしたことは事実なのだけれど、見た目は「なんだかな〜」ということも十分にあり得る。京都の世界遺産の中では宇治上神社ががっかり世界遺産の名に相応しかった。本殿は日本最古の神社建築なのだそうだが、建築に明るくない僕には良く分からない。地味な建物にしか見えなかった。世界遺産でなければ通り過ぎてしまうだろう。
上には上がいる。宇治上神社はまだましな方かも知れない。僕が訪れたことのある世界遺産の中でもっともがっかりさせられたのは、イランにあるスーサ(シューシュ)だ。紀元前4000年前から人が住んでいたスーサは、アケメネス朝ペルシャの時には都になった町。その後栄華を極めるものの、アレキサンダー大王によって陥落してしまった。大王がスーサの町にあった金銀財宝で遠征費用を全て賄えたくらいにこの町は繁栄していたようだ。しかし栄枯盛衰。今ではただの荒野だ。柱のひとつでも残ってやしないかと目を凝らしても、何も見えない。何もない。ところどころに穴が残っていたりするだけなのだ。砂まじりの風に曝されながら僕は呟いた。
「なんでこんなところに来たのだろう。」
やはりビジュアル的に刺激がある方が訪れて楽しいですね。でもこれからも世界遺産という言葉に敏感に反応してしまうのだろうなぁ。権威には弱いですから。
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