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出雲大社

 松の並木を歩いていくと、それほど大きくはない鳥居に行き着く。その先には拝殿が見える。縁結びの神様で知られる出雲大社の拝殿は、左右非対称になっていて目を引く造りをしている。左右対称でない拝殿だけが変わっているわけではない。出雲大社ではお参りの作法も他の神社とは異なっている。普通は二拝二拍一拝なのだが、出雲大社では二拝四拍一拝なのだ。これが考古学者の心に触れるようだ。四は死を意味し、大国主命の怨念を沈める役目を負っている、なんていうのを読んだ記憶が蘇る。ここは長い歴史を持つ神社だ。もう創建当時の意味合いなど誰も本当のことは分からない。ただ分かるのは、正面以外の三方を山に囲まれている出雲大社は落ち着いていて、威厳があるということくらいだ。拝殿へと進む。右側に偏った正面にぶら下がる注連縄はやはり太い。出雲地方の神社の注連縄は、関東や関西の注連縄よりもかなり太いように見受けられる。屋根にぶら下がっているというよりも、注連縄に屋根がついていると言っても良いくらいだ。

 10月のことを一般的には神無月というのは、神様がお出かけしてしまうからで、ではどこに行ってしまうのかというと、ここ出雲に来ている。だから出雲では神無月とは言わない。日本国中、ひょっとしたら世界中から神様が10月になると出雲に集結するこの月を神在月と呼ぶ。今年の12月1日は旧暦の10月1日に当たる。神様が出雲の町にやってきた野田。町は神様で溢れ、屋台が立ち並び、宿の予約は取りにくい。なんていうのは神様の世界の話であって、人間側から見た出雲の町は静かで、出雲大社も静けさの中に佇んでいた。それでも八百万の神様たちに惹きつけられたように人間もいつもよりは大勢訪れているようだった。

 訪れている人の中では女性の人が多かった。やはり縁結びの神様だからなのだろう。他の神社ではあまり見られないくらいに真剣にお参りしている女性もいた。けれども今は神在月。縁結びの神様だけでなく、離縁の神様も来ているに違いない。あの女性たちの祈りがちゃんと縁結びの神に届いているのかどうか、人事ながら心配になってしまうのだった。僕の方はというと、特に結婚願望があるわけでもないので、いつも神社でお参りするときと同じように家族の健康と僕の仕事が順調にいきますようにと祈るだけ。結構控えめな方だと思う。これくらいだったら八百万の誰かが願いを聞いてくれても良さそうだ。いや、聞いてくれるに違いない。

神社の系譜 なぜそこにあるのか
神社の系譜 なぜそこにあるのか宮元 健次

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