ご先祖様
前回にも書いたが、僕の先祖は東京は神田でお菓子のタネを卸していた。これは父が言っているし、はとこの家は今でも同じ商売を営んでいるから間違いないと思う。でも僕の家がいつの時代からその商売をしていたかは分からない。江戸時代からしていたのか、明治になってからなのか、詳しいことは分からない。まぁ由緒ある家ではないので仕方が無いのだけれど。
もう何年も自分の先祖が何処で何をしていたのか調べたいと思ったまま、ほったらかしにしている。そろそろ本格的に調べようかなと思っているのだ。もちろん我が家には家系図なんて、折り目正しいものは存在していない。調べる際には菩提寺の檀家張を辿っていくのが確実な方法らしい。しかし僕は不真面目な学生であったために文語が読めない。このことがなかなか調べ始められないことの一因なのだが...。
檀家張以外でも、家系図がある家なら、それを見れば先祖が何をしていたか分かるかもしれない。江戸時代において家系図は現在の履歴書のようなものであったらしい。苗字帯刀を許される時など、家の由緒を示すために必要なものとされ、実用的な意味を持っていたという一面もあったようだ。その結果、家系図が必要になった場合にはゼロから作り上げるなんてことがまかり通っていたらしい。零落した名族、名門、名家の末裔の系図を買い取るか、同じ苗字の過去の名族との関係を創作して、先祖を名家や名族に結びつけた系図が数多く作られることになる。織田信長の織田氏が桓武平氏であったり、徳川氏を清和源氏とする系譜も同じように創作された可能性があるらしい。家系図があるからといって、その家が由緒正しいかどうかは分からないのだ。
幼いころ、父に自分の先祖が何をしていたのか尋ねたことがある。そのとき、父は何を思ったのか「神戸でパン屋を営んでいた」と答えてくれた。江戸時代から神戸でパンを焼いていたのだぞ、と。今なら分かる。江戸時代にパン屋が無いことを。でも幼かった僕には分からなくて、結構大きくなるまで信じていたのだった。本当は全然違うことを知った時の驚きといったらなかった...。
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