月食と騒音
今朝、日本からは部分月食を見ることが出来た。午前3時5分に欠け始め、同3時51分に欠けた部分が最大になったらしい。ま、今回の月食の時は寝ていたのだけれど、昔イスラエルを旅行していた時に部分月食を見たことがある。驚くほどの早さで欠けていく月には呆気にとられるだけだった。月が地球の影に入って暗くなるからだと、頭では理由をしているものの、目の前で繰り広げられる現象は不思議なものであった。
21世紀に生きている僕でさえ、不可思議な気持ちに包まうのだから、古代の人々が月食を見たら度肝を抜かれたに違いない。世界の終わりかと思ってしまったのかも知れない。例えばモンゴルでは昔から大空には大きなワニが住んでいると考えていて、何年かに1度起こる月食は、そのワニがおこすものだと考えていたらしい。若者は長老に問う。
「月食はどうして起こるのですか?」
「それはワニが大きな口をあけて月をまるごと飲み込んでしまうからじゃ!」
なんていう会話が交わされていたらしい。月が飲み込まれては困る。そこでモンゴルの人々はワニが月を飲み込んでしまわないように、イソイソと準備をした。
「鍋や鉄板を叩いて大きな音をだすのじゃ!」
「飼っている犬に吠えさせるのじゃ!」
大きい音を出したり、犬を吠えさせたりすることによって、ワニは驚き、飲み込もうとする月を口から吐き出してくれると考えたのだった。人々は鳴らす。力の限り鳴らすのだ。しかし人々のどんちゃん騒ぎも徒労に終わってしまうかのよう。どんなに音を出しても、月は徐々に姿を消していってしまう。長老は叫ぶ。
「皆の衆!もっと音を出すのじゃ!」
ドンドンドンドン!ワンワンワン!ドンドンドン!ワンワンワン!
そうしている内に皆の努力が実を結び、月は再び姿を現し始める。
「皆の努力の賜物じゃ...。」
長老はそう呟き、大きな音を出し続けたであろう若者に労いの言葉をかけ、モンゴルの大平原は再び静寂に包まれるのであった。
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