閑職と代表
平成18年9月20日、ひとりの会社員が定年退職したことがニュースになった。別に名のある社長が勇退した訳ではないし、天才的な発明をした技術者が引退した訳でもない。
その会社員の名は串岡弘昭さんという。彼は32年もの間、空き地の草むしりなどの雑務を主な業務として命じられていた。そう一言で言うと閑職に就くことを会社から命じられていた社員だった。嫌がらせのような業務と給料も新人社員並みしか貰えない状況が続く中、彼は会社を辞めなかった。辞める訳にはいかなかった。退社することは会社の仕打ちに負けることを意味していたからだった。
今を遡ること約30年前、串岡さんは過当競争を避けるために談合し、違法な割増運賃をとっていた運送業界の実態に不満を持ち、会社の最高幹部に直訴した。しかし「役員会で決めたこと」と取り合ってくれなかったため、次に串岡さんは闇カルテルを読売新聞社名古屋支局へ告発した。内部告発者である串岡さんに対して、会社はカルテルを解消するどころか報復人事で仕返しをしたのであった。以来32年に渡り会社からの業務命令は、会社の草むしり、ストーブへの給油、雪下ろし、布団の整理などの雑務のみで、仕事らしい仕事は何一つ与えられず、手取り18万円のまま昇給も昇格も一切なかったのだという。
そんな串岡さんが嫌がらせに屈すること無く、会社を勤め上げたのだ。ニュースによると、串岡さんは普段と同じ午後5時半に退社し、職場の外で待っていた支援者に「お疲れさまでした」と迎えられ、花束を手渡されたらしい。僕も言いたい。お疲れさまでした。いざ自分が同じような状況に置かれた場合、自分が正義と思えることを貫き通せるか、自信は無い。昨今の勝ち組・負け組という収入の多寡で人の価値を判断するような風潮の中にあっては、串岡さんは負け組に色分けされてしまうだろう。しかし誰が串岡さんを馬鹿にできるであろうか。誰も串岡さんを馬鹿にすることは出来ない。「わが心に恥じるものなし」と言い切れる串岡さんに拍手喝采である。人の人生は収入の多寡で判断されるものではないのだ。
最後に、串岡さんに報復人事を行った会社は一部上場企業であるトナミ運輸株式会社であること、報復人事を行った時のトナミ運輸株式会社の会長は現在虎視眈々と自民党に復党しようと狙っている国民新党代表の綿貫民輔氏であったことを記して終わりにしたいと思う。
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