« 2006年08月 | メイン | 2006年10月 »

2006年09月30日

14番

 野球チームで最初に背番号を付けたのは大リーグのニューヨーク・ヤンキースで1929年のことだ。遠くからでも選手を見分けることが出来るようにするためだった。背番号は打順に従って付けたらしい。だから三番を打っていたベーブ・ルースが「3」で、四番を打っていたルー・ゲーリックが「4」だった。

 サッカーはというと、1928年にイングランドでユニフォームに初めて背番号がつけられた。今では団体スポーツのほとんどで背番号が導入されている。背番号がないスポーツで思い浮かぶのはクリケットくらいだ。皆が白いユニフォームを着てプレーしているクリケットは、ルールに明るくないこともあって、敵か味方かさえも見ていて良く分からない。

 最初は打順やポジションで付けていた背番号だったが、今の時代ではそのような意味合いは薄れてしまった。ゴジラ松井の55番やイチローの51番なんて、昔であったらレギュラーの背番号ではないだろう。サッカーにおいてもクラブチームの試合で個人個人が特定の背番号を付けることになって久しいが、かつては個人が特定の背番号を付けていたのは代表試合がメインだった。

 日本でもエースナンバーを連想させる10番はブラジルのペレが付けていたので、そのようなイメージを持つことになった。ペレは1958年のスウェーデン・ワールドカップに17歳で初出場した際に10番を付けていた。17歳でブラジルのエース?幾らサッカーの王様と言っても早熟過ぎる。実際のところ大会が始まるまで少なくともブラジルでは10番にエースナンバーというイメージはなかったのだ。ペレはチーム最年少だ。残っていた番号を付けたに過ぎない。それがその後のペレの大活躍でブラジルのエースナンバーとなっていったのだった。その後はジーコが付けたり、ロナウジーニョが付けたりしたのはご存知の通り。

 アルゼンチンでも10番がエースという印象がある。それはもちろんマラドーナによるものだろう。

 ドイツでは10番が特別というイメージはない。ドイツ代表で10番を背負って世界に名を轟かせた選手は少ないかもしれない。1990年のイタリア・ワールドカップ時の主将であったマテウスくらいかな。その代わり13番はエース・ストライカーというイメージがある。1970年のメキシコ・ワールドカップで得点王に輝いたゲルト・ミュラーが付けていたからだと思う。

 10番以外で背番号と選手名が最も結びついているのは14番だろう。言わずと知れたヨハン・クライフの背番号だ。クライフといえば14番、14番といえばクライフというくらいに固く結びついている。逆にクライフ以外でオランダの14番と言われても、思いつく選手がいない。僕が知らないだけかもしれないけれど。まぁそれだけクライフが不世出の天才ということだろう。

 僕の家から最寄りの駅に向かう途中に、株式会社クライフという看板が架かっている建物がある。ずっと気になっていた。ただ看板があるだけで店舗がないから、何を営んでいる会社なのか分からない。社長がサッカー好きなのかも分からない。でもオランダ贔屓なのかな、と勝手に想像していた。それが今日、建物の前に株式会社クライフの社用車が停まっていた。ナンバー・プレートを見ると、その番号は「14」だった。やっぱり!!顔も見たことの無いけれど、株式会社クライフの社長さんは、空飛ぶオランダ人のファンだったのだ!!

2006年09月29日

儲かりまっせ

 ウサマ・ビンラーディンが死亡したというニュースが流れた。サウジアラビアの情報機関からフランスにもたらされた情報として報道されたのだが、本当に死んでいるかどうかは確認できていないようだ。

 ウサマ・ビンラーディンといえば、言わずと知れた国際的テロ組織ネットワークであるアルカイダのリーダーとされ、アメリカのブッシュ大統領が自らを正義とする場合の悪の役目を与えられている。まぁ目の敵と言ったところ。空々しい大統領の対テロ発言は彼に向かって発せられているといっても過言ではない。しかし「アルカイーダ」なる組織が何なのかということになると、イマイチはっきりとしない。元々はアフガニスタンからソビエト軍を追い出すために米国CIAが育てたグループで、「アルカイーダ」という名称自体、ビンラーディンを逮捕したいFBIがでっち上げた名称だとする説もある。要するに実態は良く分からないのだ。だから本当はアルカイーダという組織はないかも知れないし、ビンラーディンという人物も架空あるいは、実在していたとしても、もう既に死んでいるのかも知れない。

 実態が分からず、名前もないとなると不便だ。何て罵ったら良いのか分からない。病気だって、病名が分からないと不安が募る一方だが、病名が分かればたとえ治療法が確立していなくても、なんだか原因が分かったような気がして少しは安心できる。周囲の理解も得られやすいだろう。

 アルカイーダも同じかもしれない。アメリカが「いやぁ、偉大なるアメリカに従わない国があるから攻撃したいんだよね」と言うよりも「国際テロ組織アルカイーダを殲滅させる」と言った方が見栄えがいい。小泉さんのようにほいほい賛成する人も出てくる。平和のためだと勘違いしてしまう人も大勢いる。平和のための武力なんて笑止千万、実態は世界最強の国家の名の下にテロが行われるだけのことだ。

 テロだろうが、正義の戦いだろうが、いざ戦争が始まれば、犠牲になる一般市民がいて、その影ではほくそ笑む人がいるのは同じ。アメリカの軍事関連企業の経営者の1人あたりの平均報酬額は、9/11テロ以前には360万ドル(約4億2331万円)だったのが、9/11テロ以降には720万ドル(8億4664万円)に倍増している。奇跡といわれた日本の高度成長なんて目じゃない。これら軍事企業のCEO達が9/11テロから昨年までに懐に入れた報酬総額は9億8400万ドル(約1157億2900万円)にも上るのだ。これはイラク国民100万人分の年収よりも多い。

 やっぱり戦争は儲かるのです。だから止められないのです。

マイケル・ムーアはマイケル・ムーアで極端なのですが...

アホでマヌケなアメリカ白人
アホでマヌケなアメリカ白人マイケル ムーア Michael Moore 松田 和也

おすすめ平均
starsU.S.A
stars批判的精神を忘れずに読みたい
starsエエ本です
starsカバーにだまされるな!際物ではない読み継がれるべき書
starsアメリカがわかる

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月28日

一攫千金

 日本テレビのアナウンサーが系列局の女性アナウンサーへのセクハラ行為で降格処分となった。サッカーが好きな僕にはこのアナウンサーは馴染み深い。南米のサッカー中継を模倣した「ゴ〜ル、ゴ〜ル、ゴ〜ル、ゴ〜ル」という連呼や、高校サッカーの実況の祭に毎年「10年にひとりの天才」なんていう発言を繰り返していた人なので、良くも悪くも個性的なアナウンサーだと思っていた。あれだけ盛り上がらない試合でも絶叫していた彼にはストレスなんて無縁なのだろうと思っていた。まぁストレスのせいでセクハラしたのではないのだろうけれど。

 一方、アメリカでのセクハラ訴訟も話題になっている。ニューヨークの高級日本料理店でウエイトレスとして働いていた日本人女性が日本人料理長ら2人にセクハラ行為を受けたとして、店などに2000万ドル(約23億円)の損害賠償を求める訴えを州の裁判所に起こしたのだ。むむ。23億円です。ロト6とサマージャンボと年末ジャンボが、一挙に当っても届きません。

 セクシャル・ハラスメントは人権侵害であるから悪であることは間違いない。悪事を働いたものが罰を受けるのも仕方がない。しかしだからといって、23億円も請求するというのは、なんだか僕の感覚では多過ぎるような気がする。訴えた女性は、シングル・マザーで働きたいのにもかかわらず、セクハラの影響で働きたくても働けないと言っているらしいが、もし23億円も懐に入って来たら、本人はおろか子どもも一生遊んでいられるではないか。

 アメリカでの訴訟では、賠償金額が多額に上ることが多い。1996年には米国三菱自動車がセクハラで訴えられ、最終的に約48億円の支払いで和解。また今年に入っても北米トヨタが訴えられ、1億9000万ドルの損害賠償を求める訴訟を起こされている。アメリカでの損害賠償額が高額になるのは、日本の裁判制度にはない「懲罰的損害賠償」のためである。懲罰的損害賠償とは損害賠償請求訴訟において加害者の不法行為が強い非難に値すると認められる場合に、裁判所の裁量により、制裁を加えて将来の同様の行為を抑止する目的で、実際の損害の補填としての賠償に加えて上乗せして支払うことを命じられる賠償のことをいう。日本の裁判制度では被害者の実害を補償するだけに留まるので、損害賠償の金額がアメリカの同様の裁判と一桁も二桁も違ってしまうのである。

 日本のやり方では、被害者が受け取る損害賠償の金額が少なすぎて、被害者が被害を回復できないという意見もあるらしい。しかしあまりにも金額が多いと、なんだか人権侵害を受けたことをネタに一攫千金を狙っているような気がしてならない。もちろん原告側に付いている弁護士がそそのかしたこともあるのだろうけれど。

まぁいろいろな訴えがあるのです...

訴えてやる!大賞―本当にあった仰天裁判73
訴えてやる!大賞―本当にあった仰天裁判73ランディ カッシンガム Randy Cassingham 鬼澤 忍

おすすめ平均
starsアメリカが抱える民事訴訟事情
stars今はまだ対岸の火事ということで笑っていられるが、いつか笑えなくなる日が来るのかもしれない…

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月27日

悲しい国

 安倍晋三新総裁が出した「美しい国」というタイトルを見る度に「悲しい国」として思い起こす国がある。それは中東にあるヨルダン王国だ。極東に住む人間に、勝手に「悲しい」なんて形容されてヨルダンの人々は怒るかもしれないけれど。

 ヨルダンには今まで2回訪れたことがある。人々は親日で優しい。まぁ訪れたのは2回ともイラク戦争前だったので、今でも親日家が多いのかどうかは分からない。訪れた時はイラクとイスラエルという中東の暴れん坊に挟まれたはいるものの、安全な国だった。唯一吃驚したのはヨルダンの首都アンマンでイスラエル行きのバスを探していた時だった。アラビア語の喋られない僕は、ただひたすらに「イスラエル、イスラエル」と連呼していた。するとおじさんが寄って来て、バスを教えてくれるのかと思いきや、僕の胸ぐらをつかんで怒鳴ったのだった。
 「イスラエルなんて言うんじゃない。イスラエルなんて国は存在しないのだ。パレスチナと言え、パレスチナと。」
イスラエルがヨルダンの一部を占領し、中東諸国から嫌われているのは、頭では分かっているつもりだったが、そんなに怒られるとは思っていなかった。僕はひたすら平身低頭して非を認めた。

 そんなヨルダンがなぜ悲しいのか。それは歴史にある。イスラム教の聖地であるメッカ、メディナ、エルサレムはかつて全てがヨルダンの王家であるハシーム家の領土だった。そのうちメッカとメディナは新興のサウジ家に取られてしまった。ハシーム家はイスラム教の預言者ムハンマドの曽祖父ハシームの一門で、イスラム世界の名門中の名門である。それがぽっと出のサウジ家に領土を奪われたのだ。ちなみにサウジアラビアという国名は、サウジ家のアラビアを意味している。さらには今のイラクもハシーム家のものだった。このことは単に領土を奪われたことを意味する訳ではない。失った土地からは金のなる油が出ているのだ。寝ているだけで金が儲かってしまうサウジ家を見て歯ぎしりしたくなるだろう。

 唯一残っていた聖地であるエルサレムまでもがイスラエルに占領されてしまう。残された小さな領土からは石油もなければ、何も残っていない。エルサレムでもあれば、大きな観光収入が見込めたであろうに、それも無くなってしまった。

 資源を持たないヨルダンは、我が儘な左隣の国と金持ちの右隣の国に挟まれながら、ひっそりと頑張っているのであった。

フレーズで攻めるという手法は、小泉さんのを承継しているようです。

美しい国へ
美しい国へ安倍 晋三

おすすめ平均
starsわけがわからん
stars自国の安全保障を他国に委ねるという憲法前文に対しての踏み込んだ発言に注目
stars『文部科学省推薦☆』
stars優等生の小論文
stars団塊の世代は?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月26日

ご先祖様

 前回にも書いたが、僕の先祖は東京は神田でお菓子のタネを卸していた。これは父が言っているし、はとこの家は今でも同じ商売を営んでいるから間違いないと思う。でも僕の家がいつの時代からその商売をしていたかは分からない。江戸時代からしていたのか、明治になってからなのか、詳しいことは分からない。まぁ由緒ある家ではないので仕方が無いのだけれど。

 もう何年も自分の先祖が何処で何をしていたのか調べたいと思ったまま、ほったらかしにしている。そろそろ本格的に調べようかなと思っているのだ。もちろん我が家には家系図なんて、折り目正しいものは存在していない。調べる際には菩提寺の檀家張を辿っていくのが確実な方法らしい。しかし僕は不真面目な学生であったために文語が読めない。このことがなかなか調べ始められないことの一因なのだが...。

 檀家張以外でも、家系図がある家なら、それを見れば先祖が何をしていたか分かるかもしれない。江戸時代において家系図は現在の履歴書のようなものであったらしい。苗字帯刀を許される時など、家の由緒を示すために必要なものとされ、実用的な意味を持っていたという一面もあったようだ。その結果、家系図が必要になった場合にはゼロから作り上げるなんてことがまかり通っていたらしい。零落した名族、名門、名家の末裔の系図を買い取るか、同じ苗字の過去の名族との関係を創作して、先祖を名家や名族に結びつけた系図が数多く作られることになる。織田信長の織田氏が桓武平氏であったり、徳川氏を清和源氏とする系譜も同じように創作された可能性があるらしい。家系図があるからといって、その家が由緒正しいかどうかは分からないのだ。

 幼いころ、父に自分の先祖が何をしていたのか尋ねたことがある。そのとき、父は何を思ったのか「神戸でパン屋を営んでいた」と答えてくれた。江戸時代から神戸でパンを焼いていたのだぞ、と。今なら分かる。江戸時代にパン屋が無いことを。でも幼かった僕には分からなくて、結構大きくなるまで信じていたのだった。本当は全然違うことを知った時の驚きといったらなかった...。

アマゾンではこんな本も売っていました...

簡単便利 家系図作成マニュアル―ご先祖さまを探してみませんか
簡単便利 家系図作成マニュアル―ご先祖さまを探してみませんか太田 さとし

おすすめ平均
stars具体的で役に立つ

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月25日

東京弁

 標準語と言うと、なんだか東京弁がそのまま横滑りでなったと思われているがそうでもないらしい。東京弁と標準語は違うもので、かつては東京弁というのが歴として存在していた。神田辺りの職人なんかは、東京弁で話していたのだろう。しかし東京弁を話す人はもうほとんどいない。粋な東京弁を耳にすることはもうないのだ。

 僕の家はもともと神田でお菓子のタネの問屋を営んでいたらしいのだが、親父は祖父の仕事の関係で小樽で生を受けた。「三代続かないと江戸っ子とは言わない」らしいから僕は江戸っ子ではないことになる。僕の意識としても自分が江戸っ子であるとは思っていないが、それでも本籍地は今でも神田岩本町だ。父も母も普通に標準語で話して、東京弁の風情は感じさせないし、僕も然りだ。
 東京弁とか江戸っ子と言うと、「べらんめぇ」とか「宵越しの銭は持たねぇ」なんて語彙が思い浮かんで、短気なイメージがあって、僕もそのようなイメージを持っていたのだが実際はそうでもなかったようだ。神田育ちの京須偕充さんは、その著書「とっておきの東京ことば」の中で「家康入国後に本格的な歴史が始まった新興の大都会が繁忙と転変をきわめていたから、また、極端に武家人口の多い土地ゆえにいつも引き締まった言動、出処進退が求められたから、端的な物言いが主流になり、そこから短期の印象が生まれたのではないか」と推測している。「早い話が」なんていう語彙も東京弁では多用されたようだが、それでもやはり話の頭にはマクラがあってから本題に入るのが、大人の流儀だったようだ。

 その本には今では耳にしなくなった幾つもの東京弁が挙げられている。大抵のものは意味がなんとなくは分かるものだったが、中には全く意味の理解できないものもある。例えば「弥助」。これだけ聞くと単に人の名前だと思ってしまうけれど、そうではない。「弥助」と言えばそれはお寿司のことを指していたのだと言う。語源は浄瑠璃の「義経千本桜」の登場人物の名だとなっているのだが、これが僕にはピンと来ない。

 言葉は時代時代で良くも悪くも変遷していくもの。今の言葉使いだって、50年後には珍妙に聞こえたり、懐かしく聞こえたりするかもしれない。

東京ことばが満載です!

とっておきの東京ことば
とっておきの東京ことば京須 偕充


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月23日

伏見稲荷大社

 京都市伏見区に伏見稲荷大社という神社がある。京都駅からJR奈良線に乗って稲荷駅下車。駅舎を出ると、すぐに参道があって辿り着く。
 伏見稲荷大社は稲荷神を祀る全国約4万社の稲荷神社の総本宮だ。御祭神は稲荷神で宇迦之御魂神(うかのみたま)などの穀物の神の尊称らしい。宇迦之御魂神の「ウカ」には穀物・食物の意味があるのだそうだ。今では産業全般の神さまとして信仰されている。稲荷大社の縁起は、欽明天皇が即位(539年または531年)される前のまだ幼少のある日「秦の大津父という者を登用すれば、大人になった時にかならずや、天下をうまく治めることができる」と言う夢を見たことに始まる。早速方々へ使者を遣わして探し求めたところ、和銅四年(711)2月初午の日に秦伊呂巨が鎮座したのだそうだ。稲荷という名前は、秦伊呂巨が富裕に驕って餅を的にした時に、その餅が白い鳥に化して山頂へ飛び去っり、そこに稲が生ったのが起こりとされている。秦伊呂巨はその稲の元へ行き、過去の誤ちを悔いた。そこの木を根ごと抜いて屋敷に植え、祀ったという。その稲生り(いねなり)が転じて「イナリ」となり「稲荷」の字が宛てられた。ちなみに秦(はた)氏は朝鮮半島の新羅地方出身であろうと考えられている帰化系氏族だ。名前の由来が面白い。仁徳天皇に絹織物を献上し、天皇がこれらの絹織物は肌膚(ハダ)に温かであると詔せられ、その時に「波多公」の姓を賜ったのがその由来とされている。その後雄略天皇の御代になると、秦公酒という者が天皇の御前に絹帛をうず高く積んで献上したので、「禹都万佐(うずまさ)」という号を賜ったとある。太秦という地名の始まりである。太秦は秦氏の領地だったのである。
 僕が伏見稲荷大社に行ったのは、何処までも続くと思われる鳥居を見るためだった。本殿横の参道を行くと、噂に聞いていたとおり、鳥居が続いている。本当に何処までも続いているように思えてならない。進んでも進んでも終わりが見えないのだ。最初は平坦だった参道も次第に階段が現れて、しっかりとした山道になってしまう。汗が流れおち、息は上がる。しばらく行くと鳥居が終わって、一息をつくものの、まだ続きがある。そうこうしているうちに結局山頂まで登ってしまった。ひーひー、はーはー汗だくになりながら降りてくると、ひとりのおじいさんと行き違った。おじいさんはしっかりとした足取りではあるけれども、その進みは遅い。ゆっくりと参道を進んでいた。手には線香を持っている。線香には既に火がついていた。おじいさん、気が早すぎないか?おじいさんの足取りでは線香が燃え尽きるまでに辿り着けないような気が...。合掌。

世界遺産好きとしては、厳島神社にも惹かれます...

世界遺産 日本編4 (厳島神社/日光社寺)
世界遺産 日本編4 (厳島神社/日光社寺)緒形直人 鳥山雄司


Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月22日

閑職と代表

 平成18年9月20日、ひとりの会社員が定年退職したことがニュースになった。別に名のある社長が勇退した訳ではないし、天才的な発明をした技術者が引退した訳でもない。
その会社員の名は串岡弘昭さんという。彼は32年もの間、空き地の草むしりなどの雑務を主な業務として命じられていた。そう一言で言うと閑職に就くことを会社から命じられていた社員だった。嫌がらせのような業務と給料も新人社員並みしか貰えない状況が続く中、彼は会社を辞めなかった。辞める訳にはいかなかった。退社することは会社の仕打ちに負けることを意味していたからだった。
 今を遡ること約30年前、串岡さんは過当競争を避けるために談合し、違法な割増運賃をとっていた運送業界の実態に不満を持ち、会社の最高幹部に直訴した。しかし「役員会で決めたこと」と取り合ってくれなかったため、次に串岡さんは闇カルテルを読売新聞社名古屋支局へ告発した。内部告発者である串岡さんに対して、会社はカルテルを解消するどころか報復人事で仕返しをしたのであった。以来32年に渡り会社からの業務命令は、会社の草むしり、ストーブへの給油、雪下ろし、布団の整理などの雑務のみで、仕事らしい仕事は何一つ与えられず、手取り18万円のまま昇給も昇格も一切なかったのだという。
 そんな串岡さんが嫌がらせに屈すること無く、会社を勤め上げたのだ。ニュースによると、串岡さんは普段と同じ午後5時半に退社し、職場の外で待っていた支援者に「お疲れさまでした」と迎えられ、花束を手渡されたらしい。僕も言いたい。お疲れさまでした。いざ自分が同じような状況に置かれた場合、自分が正義と思えることを貫き通せるか、自信は無い。昨今の勝ち組・負け組という収入の多寡で人の価値を判断するような風潮の中にあっては、串岡さんは負け組に色分けされてしまうだろう。しかし誰が串岡さんを馬鹿にできるであろうか。誰も串岡さんを馬鹿にすることは出来ない。「わが心に恥じるものなし」と言い切れる串岡さんに拍手喝采である。人の人生は収入の多寡で判断されるものではないのだ。
 最後に、串岡さんに報復人事を行った会社は一部上場企業であるトナミ運輸株式会社であること、報復人事を行った時のトナミ運輸株式会社の会長は現在虎視眈々と自民党に復党しようと狙っている国民新党代表の綿貫民輔氏であったことを記して終わりにしたいと思う。

警察の内部告発も相当の覚悟がないと出来ないでしょう

警察内部告発者・ホイッスルブロワー
警察内部告発者・ホイッスルブロワー原田 宏二

おすすめ平均
stars著者の勇気と熱意に深く敬意を表する。
stars懺悔の勇気に敬意を表します
stars警察キャリアに断罪を与えましょう

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月21日

刺激してはいけません

 最近持っている本をアマゾンで出品して売っている。ちょっとしたお小遣い稼ぎ。大量に部屋に置いてある本を出品していると、中にはプレミアがついているものもあったりして面白い。まぁ大体の本は値がつかないのだけれど。出品した本はコンビニからメール便で送る。大量に出品しているだけあって、売れる時は一日に20冊も売れることがある。宛先を書く僕も手間がかかるが、ひとつひとつ重さを量って伝票を処理するコンビニの人も大変だ。
 伝票には重量、送料、処理した人間の名前とともに受け付けた日付も記載しなければならない。その作業を目の前で見ていた僕はあることに気がついた。自宅の近くのコンビニの店員さんには中国や韓国の人も結構いる。その人たちは日付を絶対に西暦で書くのだ。日本人の場合は和暦で18年と書いて、その方がたかが2文字だけれど書く文字が少なくて済んでいる。多くの伝票を効率よく処理しようと思った時には、その差は大きいかもしれない。よくよく考えてみれば当り前のことで、外国の人にとっては和暦なんて「なんじゃそりゃ」なんてものなのだけれど、それに気がついた時にはなんだか新鮮に思えてしまった。
 和暦は元号とそれに続く年によって年を表している。飛鳥時代の孝徳天皇による大化がその始まりで、以来15世紀に渡って使われ続けてきているのだ。現在では天皇の皇位継承の際に元号を改めることが元号法によって定められているが、明治以前では不吉なことがあったり、病が流行するつど改元され、そのほとんどは1年から長くて10数年の非常に短い期間しか持続しなかったようだ。その結果、平成までに250の元号が存在している。そんなことは日本に住んでいる外国人は、余程の日本好きでないと知らないだろう。
 西暦とは違う暦を今でも使っているところにはイスラム世界がある。イスラム暦は正式にはヒジュラ歴と呼ばれ、預言者ムハンマドがメッカからメディナへ移住(ヒジュラ、聖遷)した年の年初であるユリウス暦622年7月16日をヒジュラ暦元年の1月1日としている。ヒジュラ暦は純粋太陰暦なので、閏月による地球が太陽を回る周期との補正を行わない。一月が29日の月と30日の月を交互に繰り返していく。そうすると1年間が354日となるので、1年ごとに11日ほど太陽暦とずれていくという、日本に住んでいる僕には「なんじゃそりゃ」と思ってしまう暦なのだ。イスラム暦には有名な断食月(ラマダン)があるのだが、これが西洋や日本の暦でいうところの何月に当るのかが年によって違うのはこのためだ。
 国や地域によっても結構温度差があるけれど、基本的にラマダンの時期にイスラム圏を旅するのは辛い。イランなどではただでさえ少ない食堂が日中閉まっている。仕方が無いので、お菓子屋でクッキーを買って、ホテルの部屋で一人で齧っていたことを思い出す。
 ラマダンの期間中は完全に絶食する訳ではない。日没から日の出までの間に一日分の食事を摂って、日が出ている間は何も口にしないという習慣である。水は勿論、煙草も駄目だ。赤ん坊や病人はどうするんだ!死んじゃうじゃないか!と思ったら、ちゃんと事情のある場合には昼間の断食をしなくても構わないとされている。ラマダンの時期には、お腹を減らしたムスリムが車を飛ばしに飛ばして帰宅するので交通事故が多くなるとか、夜食が盛大になり通常より食糧品の売れ行きが良くなったりとか、微笑ましい一面もあったりする。
 原則として異教徒にラマダンは強制されないので、トルコの東部にいた時に道端で煙草を吸ってみた。おじさんがよって来て、「ラマダンだから吸うな」と言ってきた。するとすぐ近くにいた別のおじさんが僕を指して「こいつはムスリムじゃないからいいのだ」とかばってくれた。そうだそうだ、俺はムスリムじゃないのだ、と思っているうちにおじさん同士は喧嘩し始める。困った僕はそそくさとその場を静かに立ち去ったのだった...。いくら吸って良くても、我慢している人を刺激しちゃいかんのです。

モロッコで断食(ラマダーン)〈上〉リビドー・ウォーズ編
モロッコで断食(ラマダーン)〈上〉リビドー・ウォーズ編たかの てるこ

おすすめ平均
starsモロッコがなつかしく思えました。
starsモロッコがなつかしく思えました。
stars旅に出たくなる本
starsおそるべし関西人。
stars旅心を堪能するならコノ本

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月20日

バボちゃんがいない...

 10月31日から世界バレーというバレーボールの世界選手権が開催される。4年に一度開かれるこの大会は、男子は16回目、女子は15回目になるのだという。テレビのCMでも宣伝しているので、知っている人も多いと思う。てっきりフジテレビ系で放送されるのかと思っていたら、世界バレーの放送はTBS系で放送するようだ。道理でバボちゃんがテレビに登場しない訳だ。なんだかちょっと淋しい...。
 それにしてもバレーボールは世界大会が多すぎやしないだろうか?毎年毎年「世界一を決める大会」と銘打っている大会があるような気がする。どれが本当の世界一を決める大会なのであろうか。
 数ある世界大会の中で、まず思い起こすのはオリンピックだ。バレーボールもオリンピックの人気種目のひとつだろう。オリンピックの正式種目になったのは、それほど昔のことではなく1964年の東京オリンピックの時からである。「サインはV」、「アタックNo.1」などの作品の元ネタになった東洋の魔女というニックネームは、この時の全日本女子チームに付けられたものだ。
 次に挙げられるのはバレーボール・ワールドカップ。国際バレーボール連盟が主催するバレーボールの世界大会で、1965年に第1回大会が開催され、1977年以降は4年に1度日本で開催されている。毎回毎回、日本で開催されているという不思議な大会である。日本以外では視聴率が取れないのであろうか。ちなみに「バボちゃん」はこの大会のマスコットで、大会ロゴマークも兼ねているという人気者。大会自体が完全に日本仕様のような雰囲気を感じてしまう。
 三つ目は10月に日本で開催されるバレーボール世界選手権だ。国際バレーボール連盟が初めて作ったバレーボールの世界大会で、最も伝統のある大会なのだそうだ。次回の開催は2007年。この時こそはバボちゃんをテレビ画面の中で躍動する姿を見ることが出来るのであろう。
 上の三つがどうやら三大公式大会のようだ。しかい結局のところ、どれが一番なのかは良く分からない。おそらく最も由緒あるワール
ドカップが一番なのだと思われるけれど、はっきりとはしない。はっきりとさせると視聴率に影響してしまうであろうから、テレビでも
言わないのだろう。誰もが世界ナンバーワンを決めると思うから熱中するのだ。
 しかしバレーボールの怪は、これ以外にも「世界」を冠する大会が存在することにある。バレーボール・ワールドリーグ:国際バレーボール連盟公認の男子ナショナルチームによる国際リーグ大会。バレーボール・ワールドグランプリ:国際バレーボール連盟主催の女子ナショナルチームによる国際公式戦。さらには北中米、南米、ヨーロッパ、アジア各大陸チャンピオン4チームと開催国日本及び国際バレーボール連盟推薦チームの合計6チームが戦い世界一を決定するワールドグランプリチャンピオンシップという大会までもある。そうなのだ。世界大会のオンパレードなのだ。バレーボールファンは片時も世界大会があることを忘れることは出来ない。選手も選手で、大会の勝利の余韻に浸っていることは許されない。すぐに次の世界大会が待っているのだ。
 バレーボールの世界ではファンも選手も安穏とすることは許されない。バレーボールの世界は大忙しなのだ。

こんなのもあったりします...

全日本女子バレー フォトブック「球萌え。」
全日本女子バレー フォトブック「球萌え。」マガジンハウス

おすすめ平均
stars想定外の突貫作業の結果?
starsニッポンチャチャチャ!

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月18日

読めます??

 昔働いていた会社の先輩に「百々」という名字の人がいた。男の先輩だったけれど「もも」なんて可愛らしい名前なのだと思っていたら違った。「百々」と書いて「とど」と読むのだった。とどさん。なんだか大きくて、浜辺で寝転んでいる動物を連想して、その姿が先輩に似合っていたので、ひとりでにやけてみたのだけれど動物のトドは「海馬」と書くようだ。
 日本には多くの名字がある。同じく漢字を使用する中国や韓国よりも圧倒的に多い。中国は約500種類、韓国は約250種類なのに対して日本には約29万種類くらいの名字があるらしい。そのためか変わった名字も多い。五十嵐さんではないけれど、名字に数字が用いられている名字も多いらしい。
 「一」と数字の「1」を書いて「にのまえ」さんと読む。2の前なのでしょう。「二」は「したなが」さんとなります。確かに「二」の横棒は下の方が長い。言われればなんとなくイメージできるものの、ヒントがないと決して読めそうにない。こう来ると「三」が気になるところ。しかし残念ながら「三」は普通に「さん」と読むようだ。「三」さん、「さんさん」、呼びかける時にちょっと間抜けかも知れない。百々さんがいた会社には「藤」さんがいて、呼びかける時には「とうさん」と言わなくてはいけなくて、父さんでもないのに「とうさん」と呼ぶのが変に恥ずかしかったのを思い出した。
 「一」の読み方もトンチのようだったが、「九」の読み方もトンチを解くようにしなければならない。「九」はこの文字だけで「く(きゅう)」と読む。一文字だけで「く」。だから「いちじく」。なんじゃそりゃという感じだけれど、そうなのだから仕方がない。トンチ系では他に「小鳥遊」という名字がある。これも普通には読めない。解読のヒントはこの時から想像するイメージにある。小鳥が遊んでいる。ピーチク、パーチクしているのだ。長閑な風景。そこには気の合う友人しかいない。せせらぎの音が聞こえ、ゆっくりと時間が流れている。小鳥にとってもやはり平和で天敵がいない。そうです、敵がいない。鷹がいないのです。だから「たかなし」と読むのだそうです。鷹以外にも小鳥の敵はいるのではないかなんて疑問を持ってはいけません。
 日本にはそれだけ多様性に富んだ名字がある一方で、名字を持たない人もいる。まぁ数は少ないけれど。ちなみに○○宮家とか呼ぶ場合の○○宮は名字ではないのだそうです。

姓は車、名は寅次郎、人呼んでフーテンの寅と発します....

名字と日本人―先祖からのメッセージ
名字と日本人―先祖からのメッセージ武光 誠

おすすめ平均
stars名字が示す、「家」の起源
starsルーツ探しにも

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月17日

見られている

 関東に大地震が来る、来る、もう来ると言われて久しい。僕が高校生のときから、実しやかに「地震予知連絡会が密かにね...」なんて噂が思い出したように流れていたけれど、幸いなことに関東大震災以来、東京は大地震に襲われていない。
 友人と飲んでいたら地震の話になった。なんでも友人の母親は、つい最近異常現象を目撃したのだと言う。朝5時前だというのに、空が真っ赤に燃えていたらしい。友人が調べた結果、それは地震の前触れなのだと言う。阪神淡路大震災の前にも同じような現象が現れたのだと力説する。現象から2ヶ月後くらいに阪神淡路大震災が起こったらしいので、友人の母が目撃した現象が本当に地震の前触れだとしたら、あと2ヶ月くらいのうちに東京は大地震に見舞われることになる。しかし、そんな珍しいことにもかかわらず、同じような現象を見たという話は他の人から聞いたことがない。
 そのような中、NHKの特集を見た。東京直下型地震の特集だった。最近の研究の結果、今までは想定されていなかった被害が起きることが予想されている。そのひとつが、谷が崩れるという現象だった。宅地を造成する際に山を削り、谷を埋めて平地を造っていることが多いのだが、その谷を埋めた部分の地中に水分が多く含まれている場合、その谷だった部分が崩れてしまうという現象だ。見た目は平坦な町並みが続き、どこが谷だったか分からない。だから怖い。地震が来た場合には崩れてしまうかもしれないのだ。番組ではその可能性がある実際の場所で撮影をしていた。でも何かがおかしい。どれだけ画面を凝視しても巧妙にぼかしがかかっていて、視聴者には分からないようにしていたのだ。場所が特定できてしまうと色々とクレームが来たりして面倒なのだろう。下手をすると「番組のせいで地価が下がった」なんて訴えられてしまうのかも知れない。結局番組の最後まで何処だかは分からなかった。
 NHKの番組のように場所でさえ特定できないようにしている反面、最近はプライバシー情報が色々なところで採られている。もちろん普通の会社が扱う個人情報は法律によって保護することが求められている。でもそれ以外の情報は結構色々なところにあるのが実情のようだ。具体的に言えば、監視カメラによって撮影された情報である。ロンドンの地下鉄テロの際に犯人が監視カメラの映像で特定されたことに驚きを覚えたものだが、日本も同じような状況かもしれない。東京世田谷の成城では商店街に監視カメラが付けられていて、常に監視されているようだ。つまり商店街を歩いていたという情報が他人の手許にあるということだ。その気になれば何処のお店に入ったかということも分かってしまうのだろう。そこで何を買ったかも分かってしまうかもしれない。なんだか監視社会のようだ。ああ、いやだ。日本全体がそのようになったら、うかうかエッチな本を買うことも出来ません。

いたるところにありますから...

監視カメラは何を見ているのか
監視カメラは何を見ているのか大谷 昭宏

おすすめ平均
stars本は薄いが・・・、

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月16日

権威に弱い

 中島誠之助さんの本を読んだ。あの「良い仕事してますねぇ」の中島さんの本だ。骨董商を営んでいる中島さんは今まで多くの偽物を見てきたと同時に、偽物に騙される人を見ている。あの中島さんでさえ、長い人生の中では騙されたこともあるのだと言う。中島さん曰く、権威に弱い人間ほど騙されやすい。特に日本人は権威に弱く、盲目的にそれを信じ込んでしまうことが多いようだ。骨董の世界では箱書きや鑑定書がそれに当る。箱書きや鑑定書がついていても専門家が見ると証明している訳でもなく、言い逃れしている箱書きや鑑定書が多いらしい。それでも素人はそれを頼りに価値があるものと思い込んでしまうのだ。
 僕も権威には弱い。僕にとっての身近な(?)権威は世界遺産だ。「ユネスコの世界遺産リストに登録されています」となってると、なんだか行ってみないと損してしまうような気がしてしまう。この前京都を旅行したときもその言葉に釣られて方々へ赴いてしまった。何せ「古都京都」は世界遺産の宝庫だ。京都で登録されている17の寺社と城のうち、実に9つの世界遺産を見てしまった。そしていつものことなのだけれど後悔した。
 「僕はユネスコの世界遺産リストに翻弄されている...。」
 ユネスコのホームページによると世界遺産とは「地球の生成と人類の歴史によって生み出され、過去から引き継がれた貴重な宝物」だそうだ。歴史の宝物です。だからビジュアル的に圧倒されるとは限らない。かつてその場所で歴史的な出来事があったりしたことは事実なのだけれど、見た目は「なんだかな〜」ということも十分にあり得る。京都の世界遺産の中では宇治上神社ががっかり世界遺産の名に相応しかった。本殿は日本最古の神社建築なのだそうだが、建築に明るくない僕には良く分からない。地味な建物にしか見えなかった。世界遺産でなければ通り過ぎてしまうだろう。
 上には上がいる。宇治上神社はまだましな方かも知れない。僕が訪れたことのある世界遺産の中でもっともがっかりさせられたのは、イランにあるスーサ(シューシュ)だ。紀元前4000年前から人が住んでいたスーサは、アケメネス朝ペルシャの時には都になった町。その後栄華を極めるものの、アレキサンダー大王によって陥落してしまった。大王がスーサの町にあった金銀財宝で遠征費用を全て賄えたくらいにこの町は繁栄していたようだ。しかし栄枯盛衰。今ではただの荒野だ。柱のひとつでも残ってやしないかと目を凝らしても、何も見えない。何もない。ところどころに穴が残っていたりするだけなのだ。砂まじりの風に曝されながら僕は呟いた。
 「なんでこんなところに来たのだろう。」
 やはりビジュアル的に刺激がある方が訪れて楽しいですね。でもこれからも世界遺産という言葉に敏感に反応してしまうのだろうなぁ。権威には弱いですから。

ニセモノ師たち
ニセモノ師たち中島 誠之助

おすすめ平均
starsニセモノ師たち
starsこれは面白い!!
stars魑魅魍魎が跋扈する骨董・古美術商の世界の面白さ
stars軽い気持ちで読み始めたが・・
starsつねに相手を称えて、同時に自分を売る

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月15日

コミュニケーション

 英会話のNOVAのテレビCMが少し前から変だと思っている。NOVAうさぎ、NOVAパンダなどアニメのキャラクターを使っていたCMには、どこか愛嬌があって可愛いかったのだが最近のCMはどこかがおかしい。
 とある公園に歩いてきた女性。どこにでもあるような公園で彼女が目にしたのは、巨大なジャングルジムに襲われて、力つきかけている外国人男性の姿だった。男性は女性に向かって必死で助けを求めている。しかし残念なことに男性が発しているのは英語だった。NOVAに通っていない彼女には何を言っているのか分からない。だから助けられない。何も出来ないまま、公園を後にした彼女は、次に同じような場面に遭遇した時には助けてあげることが出来るよう駅前のNOVAに通い出すのであった...。
 おかしい。絶対におかしい。CMでも言っているように、彼女は「男性が困っている」という状況をなんとなく理解しているのだ。つまり男性が困っていることは分かっている。それなのに男性の言っていることが分からないから、みすみす彼を見殺しにした。困った人だ。暢気にテレビを見ている僕には、なぜ彼女が男性を見殺しにするのかが分からない。
 そもそもコミュニケーションは、言葉を通じて行われることが多いのだけれど、言葉を通さなくても行える。喜怒哀楽などの人間の根本的な感情は言葉が分からなくても十分に人に伝わるもの。それは色々な国に旅をすればすぐに実感することが出来る。言葉が通じなくても、相手が怒っているとか、困っているとか、喜んでいるとかは伝わるのだ。そして困っているときには言葉も通じない人が助けてくれたりする。身振り手振りで、あーだ、こーだとしていると大体のことは通じてしまって、そういうのが旅の楽しみのひとつでもあるのだ。だから電話やメールなどの身振り手振りや顔の表情が伝わらない場合には、逆にとても難しくなると思っている。そのような経験をした僕にはCMはとても奇異に映るのだ。CMに登場する女性はおかしい。英語が出来るとか、出来ないとかではなくて、人間として何かが欠けているように見えてしまう。CMの中での役だけだとは分かっていながら、そんなコミュニケーション能力の欠けている彼女の行く末が心配になってしまうのであった。

僕も空気を読むのは苦手です...

「関係の空気」 「場の空気」
「関係の空気」 「場の空気」冷泉 彰彦

おすすめ平均
stars期待よりは・・・
stars提言は重要
starsそりゃテーマは「空気」だけど……
stars
stars洞察が深く、面白い

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月13日

関西弁って...

 東京出身の僕にはよく分からないのだが、関西弁と一口に言っても色々とある。頭では分かっている。関西弁と言っても、京都弁、河内弁、神戸弁など色々と別れていて違うということは知識としては持っている。でも聞いただけでは、それが京都弁なのか、河内弁なのかなんて事は分からなくて、一緒くたに関西弁になってしまう。神戸の人に「大阪弁だねぇ」だなんて言ってしまった時には、「あんな汚い言葉と一緒にしないで」と怒られた。それはそれで大阪の人が聞いたら怒ってしまいそうだけれど。大阪の人に「大阪弁だねぇ」と言ったら、今度は「大阪弁なんてないで」と訂正された。大阪の言葉でも大阪府北部から神戸東部、京都南辺(摂津国)にかかる摂津弁、中部の河内弁、南部の泉州弁の三種類に大きく別れるらしい。もう先祖代々関東の地で暮らしてきた僕にとっては奇々怪々だ。
 関西の人々は、それらの人が関西弁のどれを喋っているのか、ちゃんと分かると言うからもっと不思議だ。言葉使いの違いなのか、イントネーションの違いなのか。テレビに出ている芸能人も話し方でどこの育ちか大体分かるのだと言う。注意深く聞けば、どことどこの言葉が混ざっているのかさえも分かるらしい。面白い。東京なんて一応方言があるけれど、茨城弁ぐらいに違えば分かるものの、横浜育ちだとか東京の下町育ちだとかは全く分からない。肝心要の東京弁を話す人なんて、ほとんどいないだろう。町を歩いていても、テレビを見ていても「べらんめぇ」なんて言っている人は見当たらないのだ。東京なんて全国からの寄せ集めだから仕方が無いのかも知れない。
 関西弁の中で、最もイメージが良いのが京都弁だ。それは僕個人の感想かも知れない。関西出身の人には嫌みな感じに聞こえるみたいだが、僕にはとても優しく聞こえてしまう。
「どすえぇ」とか「おいでやす」なんて和服の女性に言われたら、それだけでにやけてしまうかも知れない。そんなことを京都のおばんざい屋(おばんざいという言葉も京都っぽいなぁ)で話していたら、店の人が「皆さんが連想する京都弁は花街言葉が多いんですよ」と教えてくれた。花街に売られた女性が簡単に抜けられ無くするために、言葉が独特になっているのだと言う。逃げても言葉で分かってしまう訳だ。おそろしや、おそろしや。

そういえばカーナビで方言バージョンがあったような...

関西弁を英語で喋れまっか?
関西弁を英語で喋れまっか?シャノン ヒギンス

おすすめ平均
starsよろしおまんな~関西人必読
starsほんまにおもろい英語本?関西弁の本?

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月11日

ダークサイドへようこそ

 今年は水俣病が認定されてから50年に当る。水俣病とは新日本窒素肥料(現チッソ)水俣工場がアセトアルデヒド生産時の副産物であるメチル水銀を含んだ廃液を汚染処理を十分行わないまま海(八代海)に流したことにより付近の住民が水銀中毒の被害を被った、あの公害病である。水銀中毒になると、まずは手足のしびれが起き、その後歩行困難などに至る例が多い。重症例では痙攣、精神錯乱などを起こし、最後には死に至る公害病だ。
 工業化して社会が裕福になると皆が幸せになれると信じていた世の中にあって、水俣病をはじめとする公害病の存在は、工業化がもたらすのは幸せとは限らないということを示した端的な事件だと思う。モーレツに働いて、日本が豊かになって、工業国になることが必ずしも幸福をもたらさないという事実は、当時の人々に衝撃をもたらしたに違いない。
 産經新聞によると、重金属や農薬で河川6割が汚染されているとする中国食品薬品監督管理局の内部資料が明るみに出た。農産物に影響のある潅漑用水の一部でも規制基準を大幅に上回る水銀が検出され、それが原因とみられる症例は全疾病の8割、病死の3分の1にのぼっているという。最近では幼児の頭が巨大化するという奇病さえも確認されているらしい。中国でも公害が発生し始めているのだ。驚異的な経済成長を続けている中国でも環境破壊が着実に進行している。内陸部における暴動など、国の暗部のニュースが国外に流れることの少ない中国でこのようなニュースが国外に流されたことは貴重なのかも知れない。なんて悠長に言ってばかりはいられない。中国の環境汚染は日本にとっても他人事ではない。中国から農作物を輸入しているので、中国の環境汚染が進めば日本の食卓も汚染されていることになってしまうのだ。
 いずれにせよ、中国においても公害・環境汚染が進んでいることは、中国という国の工業化が進んでいることの証なのかも知れない。それだけ中国も発展してきたのだ。ようこそ工業化社会のダークな一面へ。

水俣病と今でも闘っている人がいるのです...

証言水俣病
証言水俣病栗原 彬

おすすめ平均
stars水俣という生き方

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

2006年09月10日

アメリカの持ってきた自由

 アメリカが自衛権の行使という名目の下に攻撃したアフガニスタンとイラクは、ブッシュ大統領の一方的な戦闘終結宣言なぞ関係なく、今でも治安は悪いままだ。外務省の海外安全ホームページを見ても、どちらの国も全国的に真っ赤だ。退避勧告が出たままになっている。アフガニスタンにはガンダーラ遺跡が、イラクにはメソポタミアの遺跡があって、遺跡好きの僕としては行ってみたいところのひとつなのだが、当分の間は行くことは出来ないだろう。アメリカ軍は劣化ウラン弾を使用したみたいだから、もうずっと行けないかも知れない。
 昨晩、NHKのドキュメンタリーを見た。アメリカの9・11テロの被害にあった遺族やイラクの人々などを追った番組だった。家族を殺された遺族の中にはアメリカの軍事行動に異を唱えている人々がいるようだ。自分の味わった悲しみを連鎖させていはいけないという心情だ。アメリカ人の中にはノーム・チョムスキー氏のように反戦を表明する人がいるのは知っていたけれど、普通の一般市民やましてやテロの犠牲になった遺族の中にそのような行動をとる人々がいるとは思わなかった。正直なところ意外だった。
 キリスト教の聖書には「右のほほを打たれたら、左のほほを向けなさい」という言葉があることを知っている人は多いと思う。ブッシュ大統領の支持団体がキリスト教右派と呼ばれる原理主義的な団体であることも知られていると思う。原理主義であるからには、聖書に書いてあることは絶対だ。同性愛なぞは持っての外、中絶でさえ許されない。しかし自分の財布が絡んだら話は別なのだ。日頃の言動などを顧みず「報復」を金科玉条に掲げてしまう。右のほほを打たれたら、相手の右ほほを思い切り叩いてしまうのだ。質の悪いことに、その右ほほは全く関係のない人の右ほほだとも気づかずに。
 番組の中で印象的だったのは、イラクで通訳として働いている女子学生の言葉だった。
 「アメリカの持ってきた自由は、銃を持つ自由だった。」
という一言だった。今のイラクは無法地帯。外出するには銃が不可欠な地域もあるのだ。なんていう皮肉だろう。これは今のイラクでの発言だ。アメリカの開拓時代の発言ではない。

アメリカの没落はもう始まっているのかもしれません...

アメリカの原理主義
アメリカの原理主義河野 博子

おすすめ平均
starsBush政権の実態

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

四葉

 京都の見所の多くは歩いて回れるくらいの距離にあるとは言うものの、やはり時にはタクシーに乗ってしまう。京都のタクシーと言えば低価格路線が売りのMKタクシーは東京でも有名だ。ガソリン価格が高騰している昨今では低価格路線を続けるのも一苦労だろう。先日のテレビでは多くのタクシー会社が値上げを申請しているというニュースを流していたくらいだ。
 京都のタクシーの運転手は皆一様に親切なのには驚いた。どのタクシーに乗ってもハズレが無い。東京のタクシーに乗ると道を知らない運転手に当ってしまう不運もあるが、京都ではそんなことはない。その上、運転をしながら簡単な名所案内をしてくれる。
 「右に見えるのが北野天満宮」とか 
 「これは御所」とか
ちゃんと教えてくれるのだ。その上、喫茶店の情報も知っていたりする。運転手は中年の男性だった。その人の口から「流行の抹茶カフェ」なんて言葉が出てくるとは思わなんだ。ちなみに僕は抹茶カフェなるものが流行っていることさえ知らなかった。
 「祇園にある抹茶カフェは混んでいるから、ねねの道にある方がいいよ。大抵の場合は空いている。」
おお!おじさんは何でも知っている!みたいな雰囲気だ。まさかおじさんが若者向けの情報誌を日々読んで研究している訳ではないだろう。観光客へのサービスが徹底しているのだろうな。でも自分が知らないことを訊かれると静かになる一面もある。何でも知っていそうだったので「烏丸」は何で「からすまる」ではなくて「からすま」なのか、「る」はどこへ行ってしまったのかと訊いてみたところ、さり気なく話題を変えられてしまった。うむむ。熟練の話術ではぐらかされてしまった。
 この町で有名なタクシーにはヤサカタクシーもある。京都で初めてタクシーを走らせた伝統ある会社だ。今でも市内で最も多くのタクシーを走らせているらしい。この会社のトレードマークはクローバーだ。車体の屋根に屋根に三つ葉のクローバーを付けているタクシーをよく見かける。クローバーはその旺盛な繁茂する力から活力のシンボルとされているから、会社の繁栄を願う気持ちが込められているのだろうな。そして四葉のクローバーは幸運のシンボルとされる。それはヤサカタクシーでも同じ。市内を走る沢山のタクシーの中に数台だけ、屋根に付いているマークが四葉のクローバーになっているタクシーが走っているらしい。粋な計らいです。京都に滞在している間、四葉のヤサカタクシーを捜したが、残念ながら僕は結局見つけることが出来なかった。
 京都駅の伊勢丹の中で「〈トミカ〉ヤサカタクシー限定発売のお知らせ」なんていうのを目にしたので、もしやと思って見てみたが、こちらもしっかり三つ葉のクローバーのヤサカタクシーであった。四葉のヤサカタクシーはどこを走っていたのであろ