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海のない国

 中央アジアのウズベキスタンという国を訪れた時のこと。日本に荷物を送ろうと思って郵便局を訪れた。ウズベキスタンは周囲をカザフスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、トルクメニスタンに囲まれた内陸国だ。海はない。にもかかわらず窓口のおばちゃんは「航空便か、船便か?」と訊いてくる。僕は耳を疑った。内陸国のウズベキスタンから船便を出すとはいかに!?この国はアラル海という一応の海に接しているけれど、アラル海は他の海とはつながっていないし、年々干上がっていて小さくなっているはずだ。近い将来に消滅してしまうとされるアラル海に出る船に郵便を載せるというのか。僕の荷物を積んだその船は日本への航路を求めて、永遠にアラル海を彷徨い続けるに違いない。「船長!日本への航路が見つかりません!」
「そんなはずはない。どこかに日本へ通ずる道があるはずだ!」
船上ではこのような会話が日々続けられるのだ。仕舞いには「む、無念じゃ」と船員も死に絶えてしまい、幽霊船になってしまうのだろう。もちろん荷物はいつまで経っても届くことはないのだ。訝しがる僕をよそにおばちゃんはもう一度無愛想に「航空便か、船便か?」と質問を発している。内陸国なのに船便とは納得がいかないと思った僕は結局、航空便で荷物を出したのであった。
 友人に話をしたところ、内陸国でも船便というのは存在であるとの教示を頂いた。内陸国の場合には、鉄道かトラックかでどこかの港町まで陸路で郵便を運び、そこから船に積んで正真正銘の船便になるとのこと。ウズベキスタンだとどの港まで運ぶのだろう。ロシアのウラジオストック辺りまで運んでしまうのかもしれない。ウラジオストックからは船で新潟へ。そうなったら確かに船には積まれるけれど、行程の大部分は陸路ではないかと独りごちるのであった。
 本を読んでいると、内陸国の船便よりもずっと理不尽なものを見つけた。それは「内陸国の海軍」だ。自らの国は海に接していないのにもかかわらず海軍を持っている、そんな国が世界にはあるのだ。その国は南米にあるボリビア。ボリビア海軍は約3500人もの兵力を備えているのだという。かつてボリビアは太平洋側まで領土を持っていたのだが、1904年にチリとの武力衝突に敗れた結果、領土を奪われて内陸国になってしまった。そのためいつの日かチリから太平洋に面した港町を取り返した時のために虎視眈々と海軍を保持し続けているらしい。内陸国になって既に100年も経つ。それでも諦めがつかない。ボリビア人にとって今でも海は憧憬の的なのだ。ボリビアが軍港を持てる日が来ることを願うばかりである。

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