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ブレッソン

 久々に映画を観た。それも映画館でドキュメンタリー映画を。テレビでやっていたのを録画したまま見ていない映画はゆうに30本を越え、さらにはハードディスク・レコーダーを買ってからというものドキュメンタリー番組ばかりを見ていた僕には映画館という空間は新鮮だった。大きな画面で見るのはやはり良い。  見た映画は「アンリ・カルティエ=ブレッソン 瞬間の記憶」。フランスが誇る偉大な写真家であるブレッソンのドキュメンタリー映画だ。彼は1947年にロバート・キャパらとともにフォトジャーナリスト集団マグナムを設立。その後写真集「決定的瞬間」を発表し、世界中の写真家たちに多大な影響を与えた人物だ。2004年に亡くなった時にはシラク・フランス大統領が「フランスは偉大な才能を失った」とコメントを発表したくらいだ。僕がブレッソンの写真を初めて見たのは、もう8年くらい前かな。今はもう無くなってしまった赤坂の東京写真文化館での写真展でのことだった。当時まだ写真にあまり興味を持っていなかった僕は何気なく入った写真展で、文字通り衝撃を受けてしまった。僕の少ない語彙では表現出来ないくらい素晴らしいものだった。どの写真も構図が完璧で、「決定的瞬間」という言葉を生み出した人間に相応しい、まさに瞬間を切り取った写真ばかりだったのだ。写真を見終えた僕は、そのままカメラを買いに走ってしまった。
 映画ではブレッソン本人が自らの写真について語っている。一枚一枚写真を手に取り、シャッターを切った瞬間について楽しそうに語るのだ。機嫌を損ねてしまったココ・シャネルを撮ったとき、撮影終了直後に暗殺されてしまったガンジーを撮ったとき、車に乗ったままでハーレムを撮影した時のこと、映画撮影時にはおそらく90歳を越えていたであろう彼は陽気に、そしてお茶目に語っている。
 「偉大な写真家になろうとして生きるなんて馬鹿げている。写真のために生きるなんて。生きるから写真が生まれるんだ。」
 初めて観た写真点がブレッソンの写真展であった僕は幸せだ。

アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集成
アンリ・カルティエ=ブレッソン写真集成Henri Cartier‐Bresson 堀内 花子

岩波書店 2004-07
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